無題
眠る直前までスマホをいじるがゆえに、見る夢が混沌とする。どこへだって行けるのに、どこにも行けない気がするのは、帰る場所を気にしてしまうから。思わず詩的だ、と感想が溢れる市川春子のコマ割り。写真を見返すという行為が苦手だ。想像上のポタージュはいつもとても美味しそうなのに、自分で作ってみるとさほど美味しくないのは何故?銀のスプーンのエロティックな佇まい。怪我をすると、痛みだけが真実だと思う。分からないのは、どうして忘れたくないことばかり忘れてしまうのかということ。怖いのは、満ち足りない気持ちで夜を迎えること。好意と善意を取り違えて冗談みたいに恋をする。偶然入ったカフェで運命的な曲に出会う。3年前、インターネット上で一方的に知る女の子が自殺したことを、浴槽の中でふと思い出す。想像力が何人も救うと信じているので、辛い時、私が辛いと感じる今この瞬間も煌々と燃える星があることを想像したり、アラスカの雪原をゆくカリブーがいることを想像したりして気を紛らわしている。カモミールの茶葉を豆乳で煮出し、蜂蜜を溶け入れると、泣く子も黙る飲み物が出来上がる。おはよう、よりおやすみ、を誰かと言い合いたい。ダブリンからロンドンへ向かうフライト。泣いてしまったらあなた方と対等に居られないような気がするから、涙は見せない。
無題
人前で泣くのを堪えることで、あぁ大人になったなという嫌な実感を得る。息を止めて耐えていると、慟哭した時と同じくらいの息苦しさに襲われて、思わず失笑してしまう。睡眠薬が無いと眠れないという科白が真実になってしまってから、道化が上手くなった。妙に媚び諂う笑顔が張り付く。新聞を解約して自分と世間の乖離を感じたのも束の間、毎朝満員電車に乗り込むわたしは社会人である。耳に入るニュース曰く、アフガニスタンでは今日も人が死んだ。いつか見た展示会で香月泰男はかく語りき、『黒い屍体ではなく赤い屍体から我々は戦争を語るべきである』。自分の不幸より、世界の不幸の方がより身近に感じるのは何故だろう。鬱病の友人が自分を元気付けるためにガーデニングを始めたという。幸せになるために、人は努力を必要とされる。わたしも彼に倣って、自分のための薔薇を一輪買った。
無題
好きな曲の意訳と考察
House fire / Someone Still Loves You Boris Yeltsin
この家が焼け落ちないようにやれることはやった
でも木の家ってやつは簡単に燃えちまう
あぁ、君が僕のことをダーリンって呼んでくれることはもう二度とない
君の名を咳払いした
たばこを一日中吸った
眠くなくなるまで眠った
ひたすらに眠っていた
どうか燃やさないでくれ
惑わないでくれ
気にしないでくれ
車が事故らないようにやれることはやった
血に染まる君の愛らしい顔
まだ生気がある君の顔
エアバッグが窒息させる
あぁ、もう少し隙間が欲しい
フロントガラス越しの雨
僕はただ君が少しずつぐったりする様子を見ていた
傷付ける必要はあったのか?
どうか惑わないでくれ
気にしないでくれ
電話をかけないでくれ
すべて失ってしまうから
彼女の悪い知らせには慣れている
それはただの、悪い知らせ
日本語に訳す時に自然に聞こえるよう主語を省いたが、“僕たち”は家が焼け落ちるのを防いだり、“僕たち”は車の事故を起こさないように頑張ったにもかかわらず、家は焼け落ち、車の事故は起きてしまったという歌詞。物語のように淡々と語られるこれらの悲惨な出来事は、“僕たち”の関係の終わりを示すものだと考える。つまり、切ない別れの歌なのだ。もう修復が出来ないところまで来てしまっているので、僕は廃人のようにたばこを一日中吸うし、彼女は憔悴し切っている。
面白いのが“I”で語られていた物語が、最後のリリックで“You”になるところ。これまた日本語に訳す時に主語があると違和感を感じるのであえて伏せたが、“あなた”はすべてを失ってしまう、“あなた”は彼女の悪い知らせには慣れている、となっている。急に俯瞰的な目線になっていることから、ふとサビで繰り返される“〜しないでくれ”という願いは彼女にではなく、自分自身に語りかけているのだろうか?とまた違う見方を思い付く。
………ここまで真剣に考察してみたが、2006年のインタビューで、
「この曲にメタファーなんて無いよ、単純に家が焼け落ちて、車が事故る話さ。みんなこれを恋愛関係の話だと思っててワロタ」
と言っててめちゃくちゃガックリ来た。
無題
かつて『自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ』と、茨城のり子が言った。最近、どんどん無感動になってゆく自分に気付いて、心をときめかす何かを意識的に探している。家に引きこもって大好きな映画を垂れ流すのもいいけど、とりあえず土日は外へ飛び出す。街を歩く。気になるお店でご飯を食べる。喫茶店で本を読む。そうすることで自分の心が少し動くのを感じる。でも騙し騙し自分の心を慰めるような東京での生活に限界を覚えたら、会社を辞めて、海の見える街へ引っ越そうとぼんやり考えている
6月5日
発起して街へ飛び出す。クロワッサンが食べたいなあと思いパン屋へ立ち寄るも、それが美味しくなくて凹んだ。新宿御苑を沿いながら信濃町方面へと歩く。明治神宮外苑アイススケート場と信濃町駅前の交番の建築がカッコイイなと思った。
6月6日
友人の誕生日にギリシャ料理を食べにゆく。他のヨーロッパ料理と比べて、全体的にサッパリしている印象だった。やっぱりチーズが美味しい。
6月12日
うまく眠れず、起きても疲労が抜けていない。最近、会社や過去の嫌な記憶に関する夢ばかりみて気が滅入る。2日前は通っていた小学校を放火する夢をみた。自首すればいいものの、警察に捕まったらどうしようと内心ハラハラしながらわたしは普通の生活に戻ろうとしていて、なんだか自分という人間の本質を見たようで、目覚めは最悪だった。夜にメーカーズマークを飲みながら、台湾に住む友達と電話をした。彼女とは留学時代に出会ったので、もう2年直接会えていない。スマホの画面越しに見る彼女のやさしい垂れ目は相変わらずキュートだった。それから『ちひろさん』を読んで夜更かし。
6月13日
珈琲を淹れて、パンを齧りながら『ポンヌフの恋人』を観る朝。絶望に近いところに存在する愛ってこんな感じなのか、ときやきやした。ベッドで微睡ながら図書館で借りた平野啓一郎の『私とは何か』を数十ページ捲る。30分くらいお昼寝をした後、少し歩いたところにある銭湯へ向かう。帰り際にコンビニでビールを買って飲み歩く。月曜日のことは考えたくないから、次の土日について考える。美味しい餃子か定食を食べに行きたいな。
無題
何にいちいち感動したか覚えておきたいからメモ帳を買ったのに、よくそれを持ち忘れる。代わりのように写真を撮るけど、やっぱり文字の代わりにはならないなぁと当たり前のことを思う
水面。キラキラ反射する様子を動画に収めるのが好きだ
伊達襟が朱色なのがポイント
植物の写真をモノクロにすると、その葉脈や花弁の模様がよく分かって良い。まだ花開く前のチューリップの蕾を見ていたら、『まぶたは冬の堅い蕾となって閉じられている。』という小説の一節を思い出した。比喩表現が巧みな人の文章にどうしても惹かれる。最近、チューリップは黄色が一番可憐だと思う
桜の薄ぼんやりとしたピンク色が、この街の空によく似合う(って俵万智も言ってた気がするな)
友路有のモーニングセットは懐かしい味がする
1年と1日前、東京には春の雪が降っていた。傘をさして友人宅に向かい、そこでLサイズのピザ2枚を分け合った
写真はその時の感情まで鮮明に思い出させはしないけど、少なくとも事実を教えてくれるなぁと思う
無題
他愛もない話
①最近“セントラルパーク”と“カモ”という言葉を続け様に見かける。久しぶりに観返した『アヒルと鴨のコインロッカー』で、サリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』で、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』で(そう言えば執拗に笠原メイが湖でカモの行方を気にする描写は『ライ麦畑で捕まえて』のオマージュかな)、西加奈子の『舞台』で。わたしは最早NYに行ってセントラルパークでカモを見ることを義務のように感じている
②Love is simply the name for the desire and pursuit of the whole : 愛とは完全性に対する欲望と追求である
初めてプラトンの『饗宴』を読んだ時、同性/小児性愛について書かれてある本著を、わたしの知らない愛の話だと思った。けど今なら分かる。愛は愛で、それはわたしの知ってる愛と寸分違わないはずだ
いつか見たインタビュー記事で、AV男優が『セックスとは孤独の克服である』と言っていた。孤独じゃなくなることをある種の連帯、転じて完全と解釈するのであれば、セックスもプラトンの言う愛が根底にあるのかもしれない
ただ完全になりたい故に自分の半身を探すことに躍起になったりするのはまた違うということを『The half of it』を観て知る
「愛とは何か?」
その答えを自分の言葉で語ってみたい、いつか
いつだって自分以外ものに恐怖や呵責が反映されるのが常ならば、それらと隔絶されれば完全に幸になれるのだろうか
④家から歩いて10分と少しの所にサンドイッチ屋さんが出来た。トンカツとか春キャベツと桜海老とかタンドリーチキンとかお惣菜のサンドイッチもあれば、ホイップクリームに包まれたイチゴ、キュウイ、アップルマンゴーのフルーツサンドイッチもある。そのバリエーション豊かなガラスケースから一つ、二つを厳選して、川沿いのベンチでそれを食べるのが最近のお気に入りの時間だ。穏やかで健康的な気分になれる。そしてそういう気分になれる自分に安心もする
⑤ロックバラードが好きだなぁ、としみじみ思った。しゃがれた声の人、もしくは声の低い人が歌っていると尚良い。無骨そうな男の人が優しかったり甘かったりする言葉を選んで、メロディーにして、それを照れ隠すかのようにリズム隊が加わると、まさに完璧だ…!と感じる
おしまい
無題
馬鹿なことしたなぁと思って始終泣く 2日前の回想を永遠としていられるくらいには、わたしは暇で、愚かで、しようがない人間なのだと思う
まるであの国とは違うにおいや空気の感触に戸惑う この間の夕刻、ビルが明るいオレンジ色に染め上げられたのを見た時、何でこんな悲しい情景が浮かび上がるところに住んでいるんだろうと思って手のひらがじーんとした
最近リピートして聴いてる曲が切なくて可愛いので意訳してみた
a wish / gregory and the hawk
願い
私はあなたのシーツの下で小さくありたいと願う
私はいつもあなたが紡ぐ言葉が全て真実であることを願う
私はあなたが帰宅して、タバコを吸って、眠るまで見守っている、その半分でいいからどうやったらあなたが私を気にかけてくれるだろうって考えている
私が何を言おうが、どんな風に見えようがどうだっていい
あなたは私があなたのジーンズに手を突っ込んであなたのことを考えていたことから抜け出せない
翌朝に私を無視したって逃げられない
あぁ、私はもう泣いてしまいそう
頑張ろうとすることに疲れちゃったわ
私の血は静脈で滞らないし、あなたのハートは私のハートを粉々にするだろうな
あなたはズボンを下ろして、私のも下ろしてなんだか満足気だけど、私はただずっとあなたの手の中で小さくありたいと願っている
そして私は、あなたが丁寧に断ってから私のシャツを脱がす時の半分でいいから、私のことを気にかけてくれる方法について考えている
私自身のこととか、私がどんなフリしてるかなんてどうだっていい
だってあなたがいつも愛するであろう誰かが、そしてわたしがいつも羨むであろう誰かが、いつか現れてしまうだろうから
私はもう終わりにしまいたくて、あなたが私の夢に出てこないことを祈る
でも絶対泣いちゃうだろうな
だってもう頑張ろうとすることに疲れちゃったの
私の血は静脈で滞らないし、あなたのハートは私のハートを粉々にするだろうな
私の欲しいものが巨大な岩の下に埋まってしまっているんだとしたら、それを見つけるのはとっても難しいでしょう
その岩を機械でどかすことに私は沢山のお金を費やせるけど、あなたがそれに協力してくれるか、本当のことを言ってくれるか分からない
私はあなたのシーツの下で小さくありたいと願う
私はいつもあなたが紡ぐ言葉が全て真実であることを願う
私はあなたが帰宅して、タバコを吸って、眠るまで見守っている、その半分でいいからどうやったらあなたが私を気にかけてくれるだろうって考えている
あなたは私があなたのジーンズに手を突っ込んであなたのことを考えていたことから抜け出せない
翌朝に私を無視したって逃げられない
あぁ、私はもう泣いてしまいそう
頑張ろうとすることに疲れちゃったわ
うん、絶対泣いてしまう
頑張ろうとすることに疲れちゃったから
私の血は静脈で滞らないし、あなたのハートはわたしのハートを粉々にするだろうな、粉々に…