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とても怖い夢をみた それがどんなものだったのかは思い出せないけれど ふと、その恐怖の輪郭をなぞる昼下がり

無意識に誰かを傷付けている人を悪だと判断すること自体、烏滸がましいことなのかもしれない  だって善悪の分別なんて、そんなものは自分の主観と他人が決めた多少の法律で賄われている でもその言動に薄っすらと混じる卑しさや浅ましさを肌で感じ取るたび、どうしようもなく悲しくなってしまう 綺麗事ばかりの思想をこさえる自分にも全く嫌気がさす 

目が合うことに煩わしさを感じて視線を下げる 自分の真実が瞳から零れ落ちていく妄想をする 大切な人と会う時ほどよくする 嘘をつきたい訳じゃない でもわたしの真実によって相手の思考が作用する、その仕組みがとても怖い

眠れない夜の虚しさだったり、街を歩く時の疎外感だったり、そういった孤独を感じるあらゆる瞬間に慣れてしまった 想像より、わたしは遥かに屈強になっていた 別に悪いことではないと思うけれど、そのせいで何か大切なものをお座なりにしてしまっているのだろうかとも思う

あるべき所に自然と行き着いたと思っていても、本当はそれは自分が選択したことなのかもしれない