無題

夜の散歩で秋と会う。今年も夏らしいことはしなかった。扁桃腺が腫れて咀嚼しづらいのに、食い意地を張ってパン屋さんでパンを7個も買う。懐かしい人に電話をかける。電話越しのあなたは気が付いていないと思うけど、わたしはあなたと話をしながら、なんだか泣いてしまった。10年くらい前によく聞いていた音楽や小説に触れる。知らぬ間にSalada fingersはエピソード12まであった。光を反射する水を見て目を細めたい。わたしが脈絡もない文章を綴るのはKID FRESINOのリリックと同じ。

 

8月35日

友達と1年ぶりに会う。

美味しいご飯を食べながら最近のことを報告しあう。わたしたちの平日はもっと豊かたで満ち足りていていいはずなのにねってくたびれた笑いをする。

 

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8月37日

会社を一日休んでずっと眠っていた。少し起きたら冷やしたトマトとアイス(セブンに売っている南高梅のアイスが美味しい)を食べた。目が冴えて、お気に入りの映画を流す。主人公が自殺した元恋人に出すラブレターの文章が、まさに愛、なのだ。以前見た時と同じ感動を味わえて、わたしは内心ほっとする。

 

8月39日

赤信号を無視して渡った道路の中央から見た街が、夕日で赤く燃えていた。

 

8月41日

メンタルクリニックの医者のデスクに置かれた不細工な羊のぬいぐるみ。大好きな商店街で、入ったことのない洋食屋さんでランチ。店構えを見た瞬間から、正解だ、と思う。揚げ物にかかっているソースはデミグラソース!油が弾ける音とラジオから流れる昭和歌謡、仄暗い店内とまばらに出入りする客。こういうところにいると、相対性理論を感じる。

 

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9月某日

仕事終わり、数ヶ月ぶりに会う友人達とスペイン料理を食べた。テラス席で優雅に赤ワインを嗜んで、なんだか大人みたいだった。帰り際にありがとう、楽しかったよ、と言ってハグをした。わたしたちはそれぞれ別の場所に帰る。改札口を振り返る。オルフェウスのように“思い出”を振り返る。わたしたちが一緒に響かせた足音は、あの街の、あの並木道に記憶されるだろうか、そんなことを思いながら、わたしはやっと今日の日付を認識する。