無題
大切にしたいと思ったものは目に見えないものばかりだったから、不安だった それらの存在意義や重要度を推し量ろうとすると余計不安になったから、わたしはしばらく目を逸らすことにした
ちぐはぐな感情を抱えたまま迎える新しい月 浮ついた街並みが少しうらめしくて、イヤフォンで耳を塞ぎ、ずっと下を向いて歩いていた 地面に落ちた薄汚れたピンクの花弁が、わたしに束の間の安堵感を与えてくれる
春の夜は、意外にも肌寒くてさみしいから、なんてことないことにでも胸を切なくさせてしまう
自分の体温に近づいたシーツを引き寄せて、明日のことを考える 明日は下ろしたての、薄い水色の花柄のワンピースを着よう 髪の毛をポニーテールにしよう そうして好きな人たちに会いに行こう